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佐藤大輔|ユニット部品調達部 第2ユニット部品室|国際競争を勝ち抜くヨーロッパ調達網をつくれ

入社4年目で、海外研修制度によりヨーロッパ(イギリス→ベルギー)へ。当時、劇的なユーロ高により、現地の部品調達コストを30%低減することが命題に。そのプロジェクトのひとつを任せられる。自身初のプロジェクトの船出は、メンバーをまとめられず難航。たどたどしい英語での説明会開催。優良な金型メーカーを探すために欧州の国をひた走る日々。最終的には、ユーロ高前と同じぐらいのコストで部品調達することに成功した。

イギリス、ベルギー、他欧州各国など
現在の所属部署
ユニット部品調達部 第2ユニット部品室 シャシーG所属。調達とは、クルマづくりに必要な良品廉価な部品・材料を世界中の仕入先(部品メーカーなど)からタイムリーに購買する仕事。ブレーキやステアリングなど「走る、曲がる、止まる」といったクルマの生命線ともいえる重要な部品を扱うシャシーグループで、私のチームはブレーキやシフトレバーなど4名で年間約5000億円分の部品を調達しています。
学生時代
大学時代はスキューバダイビングサークルに所属。年中、国内やサイパンの海を潜っていました。今でも、沖縄や海外でダイビングを楽しんでいます。また、自分の足で新しい世界に飛び込むのが好きで、バックパックを背負っていろいろな場所を旅しました。
志望動機
子どもの頃からクルマ好き。父親の運転するクルマで家族旅行へ出かけるワクワク感や、窓から見える風景が大好きでした。クルマの中で過ごす時間や空間をもっと楽しくしたい。目に見えないモノより、クルマという形あるモノを介して、世界の人たちとコミュニケーションしたい。そのフィールドがトヨタにあると思い、入社を決意しました。

ヨーロッパの調達コストを低減せよ
「ヨーロッパの部品調達コストを30%低減する。そこで、おまえにプロジェクトをひとつ任せたい」。まいったなあ、えらいことになったぞ。日頃から改善の努力をしている中で、30%の原価低減は常識越えだ。私はミッションの重さを考え、途方に暮れました。
入社4年目。OT-clab(若手社員の海外研修制度)でToyota Motor Europe(TME)に着任して、じっくり海外での仕事を学ぼうと思った矢先の出来事。英語も苦手。海外で活躍したいと夢をもって入社したわりには、これまでサイパンにしか行ったことがない。ちょっと背伸びした課題が与えられると聞いていたが、まさかここまでとは。
21世紀に入り、ヨーロッパは東欧市場の拡大もあり市場全体に勢いがありました。トヨタもシェアを徐々に伸ばしており2007年時点でのシェアは約6%。トップに立つV社でも10%。まさに競合ひしめく群雄割拠の様相。そんな熾烈な状況の中で、突如やってきたのが歴史的なユーロ高でした。これまで120円だったユーロが160円。単純に部品の評価額が1.33倍。このままでは、日本やアジアから部品を調達した方が有利になる。しかし、それはできない。現地の部品メーカーが危機的な状況に陥ってしまう。これまでの調達基盤がずたずたになってしまう。地域に根ざし、地域の企業やお客様とともに繁栄していくことがトヨタの使命です。私たちに残された道は、部品メーカーとともに原価低減をしていくこと。私たちがヨーロッパで生き残るために、この原価低減は越えなければいけない試練の壁。成功すれば、部品メーカーにとっても為替変動にとらわれない強い競争力が得られるはず。お客様の笑顔のためにも、ヨーロッパすべての部品メーカーのためにも、挑むしかない。私は腹をくくりました。

イギリス・ロンドン。「オーリス」など欧州市場向け戦略車が展開される、特に重要な拠点の一つ。

TMEはベルギーのブリュッセルにある。ヨーロッパの中央部に位置し、EU本部もある。写真は街の中心部のグラン・プラス。


各国部品メーカーの代表者を集めて説明会を行った時の写真。

日本から来た技術者に、現地の部品を見てもらいながら改善のアイデアを議論することも。この時に来たのはカローラのチーフエンジニア。
初プロジェクトに、空回りした船出
「安くしてください」と言うだけなら、私たちの存在価値はありません。どうやったら良品廉価な部品をつくれるのか。パートナーとして知恵を出し、惜しみなく協力する。ときには生産方法まで踏み込み、ときにはクルマの設計自体も変更してしまう。それが調達の仕事です。
私に任されたミッションは、部品メーカーがプラスチックなどの部品をつくる際に使用する「金型」と呼ばれる型枠の原価低減。当然4年目の私は、「金型」の専門的な知識もなく、プロジェクトをコーディネートするのも初めて。とにかく上司や本社の先輩を質問攻めにしながら、まずは、デザイン、設計、生産技術など金型に関わる専門知識をもったメンバーを集めることに。上司のサポートを受けながら、ベルギー人、フランス人、トルコ人など、多国籍軍でプロジェクトをスタートさせました。さあ、やるぞ、と張り切ったのもつかの間。やはり甘くはなかった。
リーダーとしてメンバーに依頼しても、なかなか聞き入れてもらえない。スケジュールどおりに進まない…。プロジェクトの船出は難航。自分だけが空回りしている。なぜだろう。思い悩む中で、ふと“もし自分が相手の立場だったら”と考えました。日本から来たばかりのよく知らない若手が「あーしろ、こーしろ」と口を出しても、素直に聞こうと思わないのではないか。現地をリードしていこうという想いが先行してしまい、上からモノを言っていたのではないか。まず佐藤という人間を知ってもらおう。そう思い至ってからは、意図的にプロジェクトメンバーと飲みに行ったり遊んだりしながら、つたない英語で笑い話をするなど、積極的にコミュニケーションをとりました。
少しずつ現地メンバーとの距離も縮まる中で、それぞれの得手不得手もわかり、私が何をサポートしてあげればいいかも明確になってきました。対等な立場として、目的を共有し、議論できる関係性ができてくると、プロジェクトは自然に回りはじめました。

ポルトガルの山奥までひた走る
金型の原価低減のために、私たちプロジェクトチームが立てた方針は2つ。1つは、金型の構造をシンプルにするために、部品設計そのものを見直すこと。2つめは、私たち自身でヨーロッパ中の優良金型メーカーを開拓し、その金型メーカーを、部品メーカーに「紹介」すること。そもそも金型メーカーの選定は部品メーカーの責任であるゆえ、通常、カーメーカーは口出ししない領域。しかし、そこまで切り込まないと、30%低減という目標は実現できるはずがない。それが私たちの考えでした。
そこで、まず私たちは、ヨーロッパ中の部品メーカー約100社を招待して説明会を開催しました。私のたどたどしい英語でプレゼテーションを行い、「ユーロ高にも負けない競争力をつけるために、一緒にアイデアを出しながら、原価低減していきましょう」と目的と想いを伝えました。部品メーカーには「そこまでやりますか」と受け取られたと思います。
そして、金型メーカーの開拓に向けては、過去から蓄積したデータや先輩方の意見も伺いながら「これぞ」と言える会社をピックアップ。イタリア、トルコ、フランス、ポルトガル・・・ 山を越え、国を越え、プロジェクトメンバーとともにヨーロッパ中を駆け巡りました。時には「こんな山奥に本当に会社があるのか?日本人でここに来たのは自分が初めてなんじゃないか?」というくらいの場所にも出向き、やっとのことで到着した先で「なんでトヨタが直接くるの?」「うちはこれまで通りでいい」と取り合ってもらえないこともありました。訪問した先で対応いただくのは、基本的にその金型メーカーの社長や経営陣の方々。私も入社4年目ながら、トヨタの代表として来ている以上、愚直に想いを伝えていくことしかない。気持ちを折らず、1年ほどかけて回る中で、「わかった。生き残りをかけて私たちもがんばるよ」と共感してくれる金型メーカーがやっと現れてきた。よかった、想いが伝わった。そうメンバーと一緒に喜びました。結局、数社の金型メーカーの賛同をいただき、部品メーカーにご紹介。金型選定に加えてもらうことができました。
これらがきっかけとなり、新旧の金型メーカーの切磋琢磨や、部品メーカー自身の相当な努力の結果、最終的にはユーロ高前の水準まで競争力を持つほどの原価低減を実現。目標の30%にはわずかに及びませんでしたが、それでも十分なほどヨーロッパの調達基盤は強くなった。私にとっても現地の部品メーカーとともに危機を超え、また一歩前進できたことがうれしく、大きな自信になりました。

競争力のある金型メーカーを探すため、プロジェクトメンバーとともにヨーロッパ中を駆け巡った。

仕入先総会での、TME社長のプレゼンの様子。全社を挙げて、地域企業の経営基盤を強めていく。

佐藤といっしょに仕事できてよかった
プロジェクトが終わり、赴任期間も終了しようとしていた頃。最後にプロジェクトメンバーで飲もうということになりました。楽しい宴も終わりに近づいたとき、苦労をともにしてきたフランス人の生産技術スタッフが言いました。「佐藤、ありがとう。一緒に仕事できてよかったよ」。これには、ぐっときた。最初はあんなに言うことを聞いてくれなかったのに。でも、がんばってやってきた甲斐があった。こんなに素晴らしい仲間と出会えて本当によかった。心からTMEで仕事できたことに感謝しました。また、経験不足の私にこの仕事を任せ、折に触れて的確なアドバイスをしていただいた上司にも感謝しました。そしてプロジェクトをやりきった心地よい達成感とともに、私は任期を終えて帰国しました。
あれから数年。現在、私は世界各国の部品メーカーをパートナーに、ブレーキを調達するチームを率いています。トヨタで調達するということは、発注量も発注金額も、世界でもトップクラスということ。だからこそ、私たちは誰よりもその業界に詳しくなければならない。誰よりも業界をリードしていけるような存在でなければならない。どうすれば各地域の調達基盤を強くできるか。そのために部品メーカーとともに何をしていけばいいのか。課題発掘や解決方法の提案を、日本と現地を行き来しながら、現物を見て、肌で感じ、考えて、実行していく。それが、トヨタのバイヤーとしてのプライドと責任であり、世界を相手に調達という仕事をする私の使命なのです。


Copyright (c) 2017 Toyota Motor Corporation. All Rights Reserved. All Rights Reserved.

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佐藤大輔|ユニット部品調達部 第2ユニット部品室|国際競争を勝ち抜くヨーロッパ調達網をつくれ
入社4年目で、海外研修制度によりヨーロッパ(イギリス→ベルギー)へ。当時、劇的なユーロ高により、現地の部品調達コストを30%低減することが命題に。そのプロジェクトのひとつを任せられる。自身初のプロジェクトの船出は、メンバーをまとめられず難航。たどたどしい英語での説明会開催。優良な金型メーカーを探すために欧州の国をひた走る日々。最終的には、ユーロ高前と同じぐらいのコストで部品調達することに成功した。

イギリス、ベルギー、他欧州各国など

  • 現在の所属部署
    ユニット部品調達部 第2ユニット部品室 シャシーG所属。調達とは、クルマづくりに必要な良品廉価な部品・材料を世界中の仕入先(部品メーカーなど)からタイムリーに購買する仕事。ブレーキやステアリングなど「走る、曲がる、止まる」といったクルマの生命線ともいえる重要な部品を扱うシャシーグループで、私のチームはブレーキやシフトレバーなど4名で年間約5000億円分の部品を調達しています。
  • 学生時代
    大学時代はスキューバダイビングサークルに所属。年中、国内やサイパンの海を潜っていました。今でも、沖縄や海外でダイビングを楽しんでいます。また、自分の足で新しい世界に飛び込むのが好きで、バックパックを背負っていろいろな場所を旅しました。
  • 志望動機
    子どもの頃からクルマ好き。父親の運転するクルマで家族旅行へ出かけるワクワク感や、窓から見える風景が大好きでした。クルマの中で過ごす時間や空間をもっと楽しくしたい。目に見えないモノより、クルマという形あるモノを介して、世界の人たちとコミュニケーションしたい。そのフィールドがトヨタにあると思い、入社を決意しました。

ヨーロッパの調達コストを低減せよ

「ヨーロッパの部品調達コストを30%低減する。そこで、おまえにプロジェクトをひとつ任せたい」。まいったなあ、えらいことになったぞ。日頃から改善の努力をしている中で、30%の原価低減は常識越えだ。私はミッションの重さを考え、途方に暮れました。
入社4年目。OT-clab(若手社員の海外研修制度)でToyota Motor Europe(TME)に着任して、じっくり海外での仕事を学ぼうと思った矢先の出来事。英語も苦手。海外で活躍したいと夢をもって入社したわりには、これまでサイパンにしか行ったことがない。ちょっと背伸びした課題が与えられると聞いていたが、まさかここまでとは。
21世紀に入り、ヨーロッパは東欧市場の拡大もあり市場全体に勢いがありました。トヨタもシェアを徐々に伸ばしており2007年時点でのシェアは約6%。トップに立つV社でも10%。まさに競合ひしめく群雄割拠の様相。そんな熾烈な状況の中で、突如やってきたのが歴史的なユーロ高でした。これまで120円だったユーロが160円。単純に部品の評価額が1.33倍。このままでは、日本やアジアから部品を調達した方が有利になる。しかし、それはできない。現地の部品メーカーが危機的な状況に陥ってしまう。これまでの調達基盤がずたずたになってしまう。地域に根ざし、地域の企業やお客様とともに繁栄していくことがトヨタの使命です。私たちに残された道は、部品メーカーとともに原価低減をしていくこと。私たちがヨーロッパで生き残るために、この原価低減は越えなければいけない試練の壁。成功すれば、部品メーカーにとっても為替変動にとらわれない強い競争力が得られるはず。お客様の笑顔のためにも、ヨーロッパすべての部品メーカーのためにも、挑むしかない。私は腹をくくりました。

イギリス・ロンドン。「オーリス」など欧州市場向け戦略車が展開される、特に重要な拠点の一つ。

TMEはベルギーのブリュッセルにある。ヨーロッパの中央部に位置し、EU本部もある。写真は街の中心部のグラン・プラス。

初プロジェクトに、空回りした船出

「安くしてください」と言うだけなら、私たちの存在価値はありません。どうやったら良品廉価な部品をつくれるのか。パートナーとして知恵を出し、惜しみなく協力する。ときには生産方法まで踏み込み、ときにはクルマの設計自体も変更してしまう。それが調達の仕事です。
私に任されたミッションは、部品メーカーがプラスチックなどの部品をつくる際に使用する「金型」と呼ばれる型枠の原価低減。当然4年目の私は、「金型」の専門的な知識もなく、プロジェクトをコーディネートするのも初めて。とにかく上司や本社の先輩を質問攻めにしながら、まずは、デザイン、設計、生産技術など金型に関わる専門知識をもったメンバーを集めることに。上司のサポートを受けながら、ベルギー人、フランス人、トルコ人など、多国籍軍でプロジェクトをスタートさせました。さあ、やるぞ、と張り切ったのもつかの間。やはり甘くはなかった。
リーダーとしてメンバーに依頼しても、なかなか聞き入れてもらえない。スケジュールどおりに進まない…。プロジェクトの船出は難航。自分だけが空回りしている。なぜだろう。思い悩む中で、ふと“もし自分が相手の立場だったら”と考えました。日本から来たばかりのよく知らない若手が「あーしろ、こーしろ」と口を出しても、素直に聞こうと思わないのではないか。現地をリードしていこうという想いが先行してしまい、上からモノを言っていたのではないか。まず佐藤という人間を知ってもらおう。そう思い至ってからは、意図的にプロジェクトメンバーと飲みに行ったり遊んだりしながら、つたない英語で笑い話をするなど、積極的にコミュニケーションをとりました。
少しずつ現地メンバーとの距離も縮まる中で、それぞれの得手不得手もわかり、私が何をサポートしてあげればいいかも明確になってきました。対等な立場として、目的を共有し、議論できる関係性ができてくると、プロジェクトは自然に回りはじめました。

各国部品メーカーの代表者を集めて説明会を行った時の写真。

日本から来た技術者に、現地の部品を見てもらいながら改善のアイデアを議論することも。この時に来たのはカローラのチーフエンジニア。

ポルトガルの山奥までひた走る

金型の原価低減のために、私たちプロジェクトチームが立てた方針は2つ。1つは、金型の構造をシンプルにするために、部品設計そのものを見直すこと。2つめは、私たち自身でヨーロッパ中の優良金型メーカーを開拓し、その金型メーカーを、部品メーカーに「紹介」すること。そもそも金型メーカーの選定は部品メーカーの責任であるゆえ、通常、カーメーカーは口出ししない領域。しかし、そこまで切り込まないと、30%低減という目標は実現できるはずがない。それが私たちの考えでした。
そこで、まず私たちは、ヨーロッパ中の部品メーカー約100社を招待して説明会を開催しました。私のたどたどしい英語でプレゼテーションを行い、「ユーロ高にも負けない競争力をつけるために、一緒にアイデアを出しながら、原価低減していきましょう」と目的と想いを伝えました。部品メーカーには「そこまでやりますか」と受け取られたと思います。
そして、金型メーカーの開拓に向けては、過去から蓄積したデータや先輩方の意見も伺いながら「これぞ」と言える会社をピックアップ。イタリア、トルコ、フランス、ポルトガル・・・ 山を越え、国を越え、プロジェクトメンバーとともにヨーロッパ中を駆け巡りました。時には「こんな山奥に本当に会社があるのか?日本人でここに来たのは自分が初めてなんじゃないか?」というくらいの場所にも出向き、やっとのことで到着した先で「なんでトヨタが直接くるの?」「うちはこれまで通りでいい」と取り合ってもらえないこともありました。訪問した先で対応いただくのは、基本的にその金型メーカーの社長や経営陣の方々。私も入社4年目ながら、トヨタの代表として来ている以上、愚直に想いを伝えていくことしかない。気持ちを折らず、1年ほどかけて回る中で、「わかった。生き残りをかけて私たちもがんばるよ」と共感してくれる金型メーカーがやっと現れてきた。よかった、想いが伝わった。そうメンバーと一緒に喜びました。結局、数社の金型メーカーの賛同をいただき、部品メーカーにご紹介。金型選定に加えてもらうことができました。
これらがきっかけとなり、新旧の金型メーカーの切磋琢磨や、部品メーカー自身の相当な努力の結果、最終的にはユーロ高前の水準まで競争力を持つほどの原価低減を実現。目標の30%にはわずかに及びませんでしたが、それでも十分なほどヨーロッパの調達基盤は強くなった。私にとっても現地の部品メーカーとともに危機を超え、また一歩前進できたことがうれしく、大きな自信になりました。

競争力のある金型メーカーを探すため、プロジェクトメンバーとともにヨーロッパ中を駆け巡った。

仕入先総会での、TME社長のプレゼンの様子。全社を挙げて、地域企業の経営基盤を強めていく。

「佐藤と一緒に仕事できてよかった」

プロジェクトが終わり、赴任期間も終了しようとしていた頃。最後にプロジェクトメンバーで飲もうということになりました。楽しい宴も終わりに近づいたとき、苦労をともにしてきたフランス人の生産技術スタッフが言いました。「佐藤、ありがとう。一緒に仕事できてよかったよ」。これには、ぐっときた。最初はあんなに言うことを聞いてくれなかったのに。でも、がんばってやってきた甲斐があった。こんなに素晴らしい仲間と出会えて本当によかった。心からTMEで仕事できたことに感謝しました。また、経験不足の私にこの仕事を任せ、折に触れて的確なアドバイスをしていただいた上司にも感謝しました。そしてプロジェクトをやりきった心地よい達成感とともに、私は任期を終えて帰国しました。
あれから数年。現在、私は世界各国の部品メーカーをパートナーに、ブレーキを調達するチームを率いています。トヨタで調達するということは、発注量も発注金額も、世界でもトップクラスということ。だからこそ、私たちは誰よりもその業界に詳しくなければならない。誰よりも業界をリードしていけるような存在でなければならない。どうすれば各地域の調達基盤を強くできるか。そのために部品メーカーとともに何をしていけばいいのか。課題発掘や解決方法の提案を、日本と現地を行き来しながら、現物を見て、肌で感じ、考えて、実行していく。それが、トヨタのバイヤーとしてのプライドと責任であり、世界を相手に調達という仕事をする私の使命なのです。


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GLOBAL TOYOTA
佐藤大輔|ユニット部品調達部 第2ユニット部品室|国際競争を勝ち抜くヨーロッパ調達網をつくれ
入社4年目で、海外研修制度によりヨーロッパ(イギリス→ベルギー)へ。当時、劇的なユーロ高により、現地の部品調達コストを30%低減することが命題に。そのプロジェクトのひとつを任せられる。自身初のプロジェクトの船出は、メンバーをまとめられず難航。たどたどしい英語での説明会開催。優良な金型メーカーを探すために欧州の国をひた走る日々。最終的には、ユーロ高前と同じぐらいのコストで部品調達することに成功した。
赴任/出張先:イギリス、ベルギー、他欧州各国など
現在の所属部署
ユニット部品調達部 第2ユニット部品室
シャシーG所属。調達とは、クルマづくりに必要な良品廉価な部品・材料を世界中の仕入先(部品メーカーなど)からタイムリーに購買する仕事。ブレーキやステアリングなど「走る、曲がる、止まる」といったクルマの生命線ともいえる重要な部品を扱うシャシーグループで、私のチームはブレーキやシフトレバーなど4名で年間約5000億円分の部品を調達しています。
学生時代
大学時代はスキューバダイビングサークルに所属。年中、国内やサイパンの海を潜っていました。今でも、沖縄や海外でダイビングを楽しんでいます。また、自分の足で新しい世界に飛び込むのが好きで、バックパックを背負っていろいろな場所を旅しました。
志望動機
子どもの頃からクルマ好き。父親の運転するクルマで家族旅行へ出かけるワクワク感や、窓から見える風景が大好きでした。クルマの中で過ごす時間や空間をもっと楽しくしたい。目に見えないモノより、クルマという形あるモノを介して、世界の人たちとコミュニケーションしたい。そのフィールドがトヨタにあると思い、入社を決意しました。
イギリス・ロンドン。「オーリス」など欧州市場向け戦略車が展開される、特に重要な拠点の一つ。
「ヨーロッパの部品調達コストを30%低減する。そこで、おまえにプロジェクトをひとつ任せたい」。まいったなあ、えらいことになったぞ。日頃から改善の努力をしている中で、30%の原価低減は常識越えだ。私はミッションの重さを考え、途方に暮れました。
入社4年目。OT-clab(若手社員の海外研修制度)でToyota Motor Europe(TME)に着任して、じっくり海外での仕事を学ぼうと思った矢先の出来事。英語も苦手。海外で活躍したいと夢をもって入社したわりには、これまでサイパンにしか行ったことがない。ちょっと背伸びした課題が与えられると聞いていたが、まさかここまでとは。
21世紀に入り、ヨーロッパは東欧市場の拡大もあり市場全体に勢いがありました。トヨタもシェアを徐々に伸ばしており2007年時点でのシェアは約6%。トップに立つV社でも10%。まさに競合ひしめく群雄割拠の様相。そんな熾烈な状況の中で、突如やってきたのが歴史的なユーロ高でした。これまで120円だったユーロが160円。単純に部品の評価額が1.33倍。このままでは、日本やアジアから部品を調達した方が有利になる。しかし、それはできない。現地の部品メーカーが危機的な状況に陥ってしまう。これまでの調達基盤がずたずたになってしまう。地域に根ざし、地域の企業やお客様とともに繁栄していくことがトヨタの使命です。私たちに残された道は、部品メーカーとともに原価低減をしていくこと。私たちがヨーロッパで生き残るために、この原価低減は越えなければいけない試練の壁。成功すれば、部品メーカーにとっても為替変動にとらわれない強い競争力が得られるはず。お客様の笑顔のためにも、ヨーロッパすべての部品メーカーのためにも、挑むしかない。私は腹をくくりました。
TMEはベルギーのブリュッセルにある。ヨーロッパの中央部に位置し、EU本部もある。写真は街の中心部のグラン・プラス。
各国部品メーカーの代表者を集めて説明会を行った時の写真。
「安くしてください」と言うだけなら、私たちの存在価値はありません。どうやったら良品廉価な部品をつくれるのか。パートナーとして知恵を出し、惜しみなく協力する。ときには生産方法まで踏み込み、ときにはクルマの設計自体も変更してしまう。それが調達の仕事です。
私に任されたミッションは、部品メーカーがプラスチックなどの部品をつくる際に使用する「金型」と呼ばれる型枠の原価低減。当然4年目の私は、「金型」の専門的な知識もなく、プロジェクトをコーディネートするのも初めて。とにかく上司や本社の先輩を質問攻めにしながら、まずは、デザイン、設計、生産技術など金型に関わる専門知識をもったメンバーを集めることに。上司のサポートを受けながら、ベルギー人、フランス人、トルコ人など、多国籍軍でプロジェクトをスタートさせました。さあ、やるぞ、と張り切ったのもつかの間。やはり甘くはなかった。
リーダーとしてメンバーに依頼しても、なかなか聞き入れてもらえない。スケジュールどおりに進まない・・・。プロジェクトの船出は難航。自分だけが空回りしている。なぜだろう。思い悩む中で、ふと“もし自分が相手の立場だったら”と考えました。日本から来たばかりのよく知らない若手が「あーしろ、こーしろ」と口を出しても、素直に聞こうと思わないのではないか。現地をリードしていこうという想いが先行してしまい、上からモノを言っていたのではないか。まず佐藤という人間を知ってもらおう。そう思い至ってからは、意図的にプロジェクトメンバーと飲みに行ったり遊んだりしながら、つたない英語で笑い話をするなど、積極的にコミュニケーションをとりました。
少しずつ現地メンバーとの距離も縮まる中で、それぞれの得手不得手もわかり、私が何をサポートしてあげればいいかも明確になってきました。対等な立場として、目的を共有し、議論できる関係性ができてくると、プロジェクトは自然に回りはじめました。
日本から来た技術者に、現地の部品を見てもらいながら改善のアイデアを議論することも。この時に来たのはカローラのチーフエンジニア。
競争力のある金型メーカーを探すため、プロジェクトメンバーとともにヨーロッパ中を駆け巡った。
金型の原価低減のために、私たちプロジェクトチームが立てた方針は2つ。1つは、金型の構造をシンプルにするために、部品設計そのものを見直すこと。2つめは、私たち自身でヨーロッパ中の優良金型メーカーを開拓し、その金型メーカーを、部品メーカーに「紹介」すること。そもそも金型メーカーの選定は部品メーカーの責任であるゆえ、通常、カーメーカーは口出ししない領域。しかし、そこまで切り込まないと、30%低減という目標は実現できるはずがない。それが私たちの考えでした。
そこで、まず私たちは、ヨーロッパ中の部品メーカー約100社を招待して説明会を開催しました。私のたどたどしい英語でプレゼテーションを行い、「ユーロ高にも負けない競争力をつけるために、一緒にアイデアを出しながら、原価低減していきましょう」と目的と想いを伝えました。部品メーカーには「そこまでやりますか」と受け取られたと思います。
そして、金型メーカーの開拓に向けては、過去から蓄積したデータや先輩方の意見も伺いながら「これぞ」と言える会社をピックアップ。イタリア、トルコ、フランス、ポルトガル・・・ 山を越え、国を越え、プロジェクトメンバーとともにヨーロッパ中を駆け巡りました。時には「こんな山奥に本当に会社があるのか?日本人でここに来たのは自分が初めてなんじゃないか?」というくらいの場所にも出向き、やっとのことで到着した先で「なんでトヨタが直接くるの?」「うちはこれまで通りでいい」と取り合ってもらえないこともありました。訪問した先で対応いただくのは、基本的にその金型メーカーの社長や経営陣の方々。私も入社4年目ながら、トヨタの代表として来ている以上、愚直に想いを伝えていくことしかない。気持ちを折らず、1年ほどかけて回る中で、「わかった。生き残りをかけて私たちもがんばるよ」と共感してくれる金型メーカーがやっと現れてきた。よかった、想いが伝わった。そうメンバーと一緒に喜びました。結局、数社の金型メーカーの賛同をいただき、部品メーカーにご紹介。金型選定に加えてもらうことができました。
これらがきっかけとなり、新旧の金型メーカーの切磋琢磨や、部品メーカー自身の相当な努力の結果、最終的にはユーロ高前の水準まで競争力を持つほどの原価低減を実現。目標の30%にはわずかに及びませんでしたが、それでも十分なほどヨーロッパの調達基盤は強くなった。私にとっても現地の部品メーカーとともに危機を超え、また一歩前進できたことがうれしく、大きな自信になりました。
仕入先総会での、TME社長のプレゼンの様子。全社を挙げて、地域企業の経営基盤を強めていく。
 
プロジェクトが終わり、赴任期間も終了しようとしていた頃。最後にプロジェクトメンバーで飲もうということになりました。楽しい宴も終わりに近づいたとき、苦労をともにしてきたフランス人の生産技術スタッフが言いました。「佐藤、ありがとう。一緒に仕事できてよかったよ」。これには、ぐっときた。最初はあんなに言うことを聞いてくれなかったのに。でも、がんばってやってきた甲斐があった。こんなに素晴らしい仲間と出会えて本当によかった。心からTMEで仕事できたことに感謝しました。また、経験不足の私にこの仕事を任せ、折に触れて的確なアドバイスをしていただいた上司にも感謝しました。そしてプロジェクトをやりきった心地よい達成感とともに、私は任期を終えて帰国しました。
あれから数年。現在、私は世界各国の部品メーカーをパートナーに、ブレーキを調達するチームを率いています。トヨタで調達するということは、発注量も発注金額も、世界でもトップクラスということ。だからこそ、私たちは誰よりもその業界に詳しくなければならない。誰よりも業界をリードしていけるような存在でなければならない。どうすれば各地域の調達基盤を強くできるか。そのために部品メーカーとともに何をしていけばいいのか。課題発掘や解決方法の提案を、日本と現地を行き来しながら、現物を見て、肌で感じ、考えて、実行していく。それが、トヨタのバイヤーとしてのプライドと責任であり、世界を相手に調達という仕事をする私の使命なのです。

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