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上田良平|商品・事業各九分 基本企画室|環境規制の最難関アメリカで期待を超えるポストハイブリッドを

HV車の次の時代を担う環境車として2012年に発売された「プリウスPHV」。トヨタの期待とは裏腹に、売れ行きは決して順調といえなかった。すでに次期モデルの企画はスタートしている。販売目標に到達しない要因をつかみ、一刻も早くフィードバックしなければ。現行モデルをお客様がどう捉えているのか。直接、その生の声を聞くために、最も環境規制が厳しく、環境車の主戦場であるアメリカへと旅立った。

ニューヨーク近郊、カリフォルニア
現在の所属部署
商品・事業企画部 基本企画室
グローバルに将来の自動車市場を見据え、全体最適を考えた上で、どのようなラインナップを構えれば、全世界のお客様ニーズにタイムリーにお応えできるのかといった戦略を練る部署。中でも私は、PHV(プラグイン・ハイブリッド)やEV(電気自動車)といった次世代環境車の将来戦略を担当しています。
学生時代
大学時代は4年間、寮住まい。4名での集団生活で、毎日が修学旅行状態でした。環境問題に興味を持ち、その縁から環境専門誌の編集部で3年間アルバイト。学校に行くよりも、編集部に入り浸っている時間が長かったかもしれません。
志望動機
高校時代から自身の関心領域であった「環境問題」の解決に貢献できる企業を探しました。中でも自動車業界は、将来的に環境技術が競争力の一角を担い、社会変革の中核的存在になるはずだと思っていました。トヨタに決めたのは、初代「プリウス」の存在。ハイブリッド車の黎明期に、普及を強く意識したクルマの企画に、トヨタの環境への取り組みに対する本気度を感じました。

初代プリウスに引き寄せられて
最終戦争によって人類社会が滅びてから、1000年の時を経た未来の話。全7巻からなる、あるアニメーションの原作を読み終えたとき、私の心の中に大きな衝撃が起こりました。自然とは?環境とは?人間とは?当時、高校3年生。世の中では“エコ”という言葉が声高に叫ばれるようになってきた最中で、「環境問題」は私の進む道を決める不動のテーマになりました。大学は、環境経済学を専攻。アルバイトは環境専門誌の編集部員。そして就職。地球環境を少しでも良くしていくためには、やはり実業で世界的に影響力のある企業がいい。エネルギー、自動車、鉄鋼… 迷う中で決め手になったのは、“21世紀に間に合いました”という鮮烈なキャッチコピーとともにデビューした「プリウス」の存在でした。ガソリンエンジンと電気モーターを備えたHV(ハイブリッド車)というこれまでにないアプローチ。エコカーを世の中全体へ普及させていこうという強い想いがひしひしと伝わってきた。ここならば、地球環境に役立つ仕事ができる。地球規模でチャレンジできるはずだ。私はトヨタへの入社を決めました。
入社後は、調査部へ配属。「うーん、環境とは関係なさそうだなあ」と内心はちょっとがっかり。しかし、想い続けなければ夢は実現しない。最初の2年ほどは、世界の需要予測などマーケットリサーチをしていましたが、積極的に手を挙げているうちに、競合他社の環境技術戦略のベンチマーキングを任せてもらえるようになりました。その後も「10年後のインド・中国のライフスタイルはどうなるのか」「2020年代の世界を予測して、自動車業界にどんなリスクがあるのか」など、環境や経済からのアプローチをからめた未来予測を担当。だんだん、環境とのかかわりが濃くなってきました。そして2012年、ついに次世代環境車の商品企画の担当へ。初代プリウスによってトヨタに引き寄せられた私は、その孫ともいえる「次期プリウスPHV(plug-in hybridプラグイン・ハイブリッド車)」の企画を担当することになったのです。

カリフォルニア州でプリウス PHVユーザーへのインタビューを行った時の写真。お客様のライフスタイル、使用実態や満足点、不満点を細かくお聞きする。

こちらはニュージャージー州でユーザーインタビューを行った時の写真。充電ケーブル収納フックを自作するなど、DIY文化の浸透が伺えた。


こちらもニュージャージー州のお客様。充電ケーブル盗難防止のため、南京錠を設置。大事に扱っていただいていることにうれしく思う。

ロンドンに出張したことも。販売店にてBMW i8のボデーフレーム展示を視察。電池搭載で重くなりがちな車体を、大幅に軽量化していることに驚かされた。
市場の要求をさぐりにアメリカへ
「プリウス」と「プリウスPHV」の違いはなにか。簡単にいえば、PHVは電化製品のようにコンセントから充電できる機能を搭載したクルマ。当然、プリウスよりも電気で走行する時間が長くなるため、燃費も大幅に向上、CO2の排出も軽減されるわけです。プリウスは世界でもベストセラーとなり、HV車(ハイブリッド車)の普及に大きく貢献してきました。さらに、その先へ。ポストHVの担い手は、PHVをおいて他にない。私たちが強い決意を持って、2012年に世に送り出したのが「プリウスPHV」でした。しかし、その売れ行きは決して好調とは言えませんでした。想定していた販売目標に、届いていない。
なぜだろう、何がいけないのか。どうすればお客様の期待に応えられるのか。数年後を見据えて、すでに次期「プリウスPHV」の企画は進んでいます。このままでは、まずい。早く現行「プリウスPHV」に対する市場ニーズをさぐり、次期モデル企画にフィードバックしなければ。とにかく市場を、お客様を見に行こう。発売から約1年。危機感を募らせる中、開発を担当するエンジニアと私はアメリカへ向かいました。
なぜアメリカか。それはトヨタの収益を考える上で最重要市場の一角であることはもちろん、世界で最も厳しい環境規制がある国だから。燃費やCO2排出に関する規制だけでなく、高速道路に環境車の優先レーンが設置されていたり、州によっては自動車メーカーが販売するクルマのうちの一定比率をEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などZero Emission Vehicle(無公害車)にしなければならない。だからこそ、環境車に対するアメリカ市場の期待は大きいわけです。当然、競合も多く、手ごわい。環境車の激戦区で、期待に応えられるかどうかが「プリウスPHV」をポストHVに成長させるための試金石になる。とにかく、お客様の生の声を聞こう。私たちは、東海岸(ニューヨーク周辺)と西海外(カリフォルニア周辺)を中心に、徹底的に販売店を回り、お客様のご自宅まで伺ってインタビューを重ねました。

「Wow!」が足りない
「ソーラーカーみたいなカタチでさ、太陽光でつくった電気で走るとかね」「コンシェルジュが画面に現れて、教えてくれるような情報端末をつけてよ」「トヨタならできるでしょ!」・・・
「プリウスPHV」を買ってくれたお客様や、検討いただいたが買っていただけなかったお客様など約30名にグループインタビュー。いやいや、こんなに熱い意見が飛び出すとは。もっと辛辣な批判を浴びる覚悟をしていた私は、想像を超えた展開にびっくり。みんなが自分のことのようにプリウスを語っている。まさに圧巻。インタビューしながらも、ああ、アメリカのお客様はプリウスを愛してくれているんだ、心からトヨタに信頼を寄せてくれているんだ、と胸を打たれました。一方で、現行モデルがお客様の期待に応えきれていない。企画に携わる者として悔しさと責任を痛感しました。
アメリカで「プリウスPHV」が思ったように伸びない原因。それは一言でいえば、「Wow!(驚き)」が足りないこと。「プリウス」から「プリウスPHV」になり価格は8000ドル近く高くなりました。しかも毎日充電する必要がある。その価格や手間を超えるだけの、先進性や装備、そしてEV航続距離などに驚きがない、というのがアメリカの声でした。私たちは劇的に燃費が良くなればお客様に確実に喜んでいただけると思っていた。間違いではないけれど、それだけじゃダメなんだ。もっと「Wow!」を創らなければ・・・
とくに、EV走行距離は大きな課題。アメリカは通勤で片道30kmは走る。しかし現行モデルは一晩充電してもEV走行できるのは約20km。お客様のおっしゃることはごもっともだ。航続距離を伸ばすには電池を大きくしなければならない。その分、価格も重量も増えてしまう。それでも、次期PHVでは絶対になんとかしなければならない。
インタビューも終わって街行くクルマの流れを観察する中、西海岸ではぽつぽつ見かけることができた「プリウスPHV」も、東海岸ではあまり見かけることがありませんでした。なんと寂しい光景だろう。次にここに来るときは、あふれるほどの「プリウスPHV」が走っている光景を目にしたい。そんな決意を胸に、私たちは帰国しました。

NYマンハッタンのレストランにて FGI(フォーカス・グループ・インタビュー)を実施。プリウス PHVオーナーを集め、地下の個室を貸切りにして行った。

カリフォルニア州のフリーウェイ(高速道)を疾走するプリウス PHV。もっとたくさんのPHVが走る姿を実現するため、我々の挑戦は終わらない。

次期「プリウスPHV」の企画変更へ
帰国してすぐに、私はお客様の声や分析データをもとに、「次期PHV企画の商品性課題」についてまとめました。特にEV走行距離を伸ばすことは大命題。すでに次期PHVはコンセプトも決まっている中で、変更は難しいかもしれない。しかし、なんとしても実現する。アメリカで熱く語ってくれたお客様のためにも。私はPHVの開発責任者と対話し、次世代環境車の方向を決めていく社内会議でも議論を重ねながら、「EV航続距離」に関する企画変更を提案。最終的には経営トップのジャッジを経て、ついに企画変更が承認されました。この変更がアメリカの、そして世界のお客様を笑顔にする一歩になればうれしい。これからも「Wow!」を創りだしていかなければ期待は超えられませんが、そのミッションは後任に譲り、私は「プリウスPHV」の企画担当を離れることに。現在は、個別車種の企画にとどまらず、次世代環境車の全体ラインナップ戦略を提案する仕事を担当しています。
10年後も、50年後も、クルマがお客様の移動手段であり続けるためには、地球環境に負担をかけないことが不可欠です。ご存じの通り、現在はHVやPHV、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)など、動力に電気を利用する「電動動化」というエネルギー革命の波が自動車業界に大きなインパクトを与えています。また同時並行で、「クルマとクルマ」や「クルマと道路」を通信でつなぐなど、より安全で快適な運転を可能にする世界を目指して、情報通信領域とクルマの関わりも大きく進化しつつあります。エネルギーの系と情報通信の系が進化と融合を遂げる今、自動車産業は100年に1度の大きな革命前夜のような状態。トヨタも純粋な自動車メーカーという枠を超えて、さまざまなビジネスチャンスやチャレンジが増えてくることは間違いありません。「未来にわくわくしながら、革命前夜を楽しんでやろう!」「そんな想いを共有できる人と一緒に、まだ見ぬ世界をつくっていきたい!」。日々、そう思って仕事をしてます。


Copyright (c) 2017 Toyota Motor Corporation. All Rights Reserved. All Rights Reserved.

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上田良平|商品・事業企画部 基本企画室|環境規制の最難関アメリカで期待を超えるポストハイブリッドを
HV車の次の時代を担う環境車として2012年に発売された「プリウスPHV」。トヨタの期待とは裏腹に、売れ行きは決して順調といえなかった。すでに次期モデルの企画はスタートしている。販売目標に到達しない要因をつかみ、一刻も早くフィードバックしなければ。現行モデルをお客様がどう捉えているのか。直接、その生の声を聞くために、最も環境規制が厳しく、環境車の主戦場であるアメリカへと旅立った。

ニューヨーク近郊、カリフォルニア

  • 現在の所属部署
    商品・事業企画部 基本企画室
    グローバルに将来の自動車市場を見据え、全体最適を考えた上で、どのようなラインナップを構えれば、全世界のお客様ニーズにタイムリーにお応えできるのかといった戦略を練る部署。中でも私は、PHV(プラグイン・ハイブリッド)やEV(電気自動車)といった次世代環境車の将来戦略を担当しています。
  • 学生時代
    大学時代は4年間、寮住まい。4名での集団生活で、毎日が修学旅行状態でした。環境問題に興味を持ち、その縁から環境専門誌の編集部で3年間アルバイト。学校に行くよりも、編集部に入り浸っている時間が長かったかもしれません。
  • 志望動機
    高校時代から自身の関心領域であった「環境問題」の解決に貢献できる企業を探しました。中でも自動車業界は、将来的に環境技術が競争力の一角を担い、社会変革の中核的存在になるはずだと思っていました。トヨタに決めたのは、初代「プリウス」の存在。ハイブリッド車の黎明期に、普及を強く意識したクルマの企画に、トヨタの環境への取り組みに対する本気度を感じました。

初代プリウスに引き寄せられて

最終戦争によって人類社会が滅びてから、1000年の時を経た未来の話。全7巻からなる、あるアニメーションの原作を読み終えたとき、私の心の中に大きな衝撃が起こりました。自然とは?環境とは?人間とは?当時、高校3年生。世の中では“エコ”という言葉が声高に叫ばれるようになってきた最中で、「環境問題」は私の進む道を決める不動のテーマになりました。大学は、環境経済学を専攻。アルバイトは環境専門誌の編集部員。そして就職。地球環境を少しでも良くしていくためには、やはり実業で世界的に影響力のある企業がいい。エネルギー、自動車、鉄鋼… 迷う中で決め手になったのは、“21世紀に間に合いました”という鮮烈なキャッチコピーとともにデビューした「プリウス」の存在でした。ガソリンエンジンと電気モーターを備えたHV(ハイブリッド車)というこれまでにないアプローチ。エコカーを世の中全体へ普及させていこうという強い想いがひしひしと伝わってきた。ここならば、地球環境に役立つ仕事ができる。地球規模でチャレンジできるはずだ。私はトヨタへの入社を決めました。
入社後は、調査部へ配属。「うーん、環境とは関係なさそうだなあ」と内心はちょっとがっかり。しかし、想い続けなければ夢は実現しない。最初の2年ほどは、世界の需要予測などマーケットリサーチをしていましたが、積極的に手を挙げているうちに、競合他社の環境技術戦略のベンチマーキングを任せてもらえるようになりました。その後も「10年後のインド・中国のライフスタイルはどうなるのか」「2020年代の世界を予測して、自動車業界にどんなリスクがあるのか」など、環境や経済からのアプローチをからめた未来予測を担当。だんだん、環境とのかかわりが濃くなってきました。そして2012年、ついに次世代環境車の商品企画の担当へ。初代プリウスによってトヨタに引き寄せられた私は、その孫ともいえる「次期プリウスPHV(plug-in hybridプラグイン・ハイブリッド車)」の企画を担当することになったのです。

カリフォルニア州でプリウス PHVユーザーへのインタビューを行った時の写真。お客様のライフスタイル、使用実態や満足点、不満点を細かくお聞きする。

こちらはニュージャージー州でユーザーインタビューを行った時の写真。充電ケーブル収納フックを自作するなど、DIY文化の浸透が伺えた。

市場の要求をさぐりにアメリカへ

「プリウス」と「プリウスPHV」の違いはなにか。簡単にいえば、PHVは電化製品のようにコンセントから充電できる機能を搭載したクルマ。当然、プリウスよりも電気で走行する時間が長くなるため、燃費も大幅に向上、CO2の排出も軽減されるわけです。プリウスは世界でもベストセラーとなり、HV車(ハイブリッド車)の普及に大きく貢献してきました。さらに、その先へ。ポストHVの担い手は、PHVをおいて他にない。私たちが強い決意を持って、2012年に世に送り出したのが「プリウスPHV」でした。しかし、その売れ行きは決して好調とは言えませんでした。想定していた販売目標に、届いていない。
なぜだろう、何がいけないのか。どうすればお客様の期待に応えられるのか。数年後を見据えて、すでに次期「プリウスPHV」の企画は進んでいます。このままでは、まずい。早く現行「プリウスPHV」に対する市場ニーズをさぐり、次期モデル企画にフィードバックしなければ。とにかく市場を、お客様を見に行こう。発売から約1年。危機感を募らせる中、開発を担当するエンジニアと私はアメリカへ向かいました。
なぜアメリカか。それはトヨタの収益を考える上で最重要市場の一角であることはもちろん、世界で最も厳しい環境規制がある国だから。燃費やCO2排出に関する規制だけでなく、高速道路に環境車の優先レーンが設置されていたり、州によっては自動車メーカーが販売するクルマのうちの一定比率をEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などZero Emission Vehicle(無公害車)にしなければならない。だからこそ、環境車に対するアメリカ市場の期待は大きいわけです。当然、競合も多く、手ごわい。環境車の激戦区で、期待に応えられるかどうかが「プリウスPHV」をポストHVに成長させるための試金石になる。とにかく、お客様の生の声を聞こう。私たちは、東海岸(ニューヨーク周辺)と西海外(カリフォルニア周辺)を中心に、徹底的に販売店を回り、お客様のご自宅まで伺ってインタビューを重ねました。

こちらもニュージャージー州のお客様。充電ケーブル盗難防止のため、南京錠を設置。大事に扱っていただいていることにうれしく思う。

ロンドンに出張したことも。販売店にてBMW i8のボデーフレーム展示を視察。電池搭載で重くなりがちな車体を、大幅に軽量化していることに驚かされた。

「Wow!」が足りない

「ソーラーカーみたいなカタチでさ、太陽光でつくった電気で走るとかね」「コンシェルジュが画面に現れて、教えてくれるような情報端末をつけてよ」「トヨタならできるでしょ!」・・・
「プリウスPHV」を買ってくれたお客様や、検討いただいたが買っていただけなかったお客様など約30名にグループインタビュー。いやいや、こんなに熱い意見が飛び出すとは。もっと辛辣な批判を浴びる覚悟をしていた私は、想像を超えた展開にびっくり。みんなが自分のことのようにプリウスを語っている。まさに圧巻。インタビューしながらも、ああ、アメリカのお客様はプリウスを愛してくれているんだ、心からトヨタに信頼を寄せてくれているんだ、と胸を打たれました。一方で、現行モデルがお客様の期待に応えきれていない。企画に携わる者として悔しさと責任を痛感しました。
アメリカで「プリウスPHV」が思ったように伸びない原因。それは一言でいえば、「Wow!(驚き)」が足りないこと。「プリウス」から「プリウスPHV」になり価格は8000ドル近く高くなりました。しかも毎日充電する必要がある。その価格や手間を超えるだけの、先進性や装備、そしてEV航続距離などに驚きがない、というのがアメリカの声でした。私たちは劇的に燃費が良くなればお客様に確実に喜んでいただけると思っていた。間違いではないけれど、それだけじゃダメなんだ。もっと「Wow!」を創らなければ・・・
とくに、EV走行距離は大きな課題。アメリカは通勤で片道30kmは走る。しかし現行モデルは一晩充電してもEV走行できるのは約20km。お客様のおっしゃることはごもっともだ。航続距離を伸ばすには電池を大きくしなければならない。その分、価格も重量も増えてしまう。それでも、次期PHVでは絶対になんとかしなければならない。
インタビューも終わって街行くクルマの流れを観察する中、西海岸ではぽつぽつ見かけることができた「プリウスPHV」も、東海岸ではあまり見かけることがありませんでした。なんと寂しい光景だろう。次にここに来るときは、あふれるほどの「プリウスPHV」が走っている光景を目にしたい。そんな決意を胸に、私たちは帰国しました。

NYマンハッタンのレストランにて FGI(フォーカス・グループ・インタビュー)を実施。プリウス PHVオーナーを集め、地下の個室を貸切りにして行った。

カリフォルニア州のフリーウェイ(高速道)を疾走するプリウス PHV。もっとたくさんのPHVが走る姿を実現するため、我々の挑戦は終わらない。

次期「プリウスPHV」の企画変更へ

帰国してすぐに、私はお客様の声や分析データをもとに、「次期PHV企画の商品性課題」についてまとめました。特にEV走行距離を伸ばすことは大命題。すでに次期PHVはコンセプトも決まっている中で、変更は難しいかもしれない。しかし、なんとしても実現する。アメリカで熱く語ってくれたお客様のためにも。私はPHVの開発責任者と対話し、次世代環境車の方向を決めていく社内会議でも議論を重ねながら、「EV航続距離」に関する企画変更を提案。最終的には経営トップのジャッジを経て、ついに企画変更が承認されました。この変更がアメリカの、そして世界のお客様を笑顔にする一歩になればうれしい。これからも「Wow!」を創りだしていかなければ期待は超えられませんが、そのミッションは後任に譲り、私は「プリウスPHV」の企画担当を離れることに。現在は、個別車種の企画にとどまらず、次世代環境車の全体ラインナップ戦略を提案する仕事を担当しています。
10年後も、50年後も、クルマがお客様の移動手段であり続けるためには、地球環境に負担をかけないことが不可欠です。ご存じの通り、現在はHVやPHV、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)など、動力に電気を利用する「電動動化」というエネルギー革命の波が自動車業界に大きなインパクトを与えています。また同時並行で、「クルマとクルマ」や「クルマと道路」を通信でつなぐなど、より安全で快適な運転を可能にする世界を目指して、情報通信領域とクルマの関わりも大きく進化しつつあります。エネルギーの系と情報通信の系が進化と融合を遂げる今、自動車産業は100年に1度の大きな革命前夜のような状態。トヨタも純粋な自動車メーカーという枠を超えて、さまざまなビジネスチャンスやチャレンジが増えてくることは間違いありません。「未来にわくわくしながら、革命前夜を楽しんでやろう!」「そんな想いを共有できる人と一緒に、まだ見ぬ世界をつくっていきたい!」。日々、そう思って仕事をしてます。


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上田良平|商品・事業企画部 基本企画室|環境規制の最難関アメリカで期待を超えるポストハイブリッドを
HV車の次の時代を担う環境車として2012年に発売された「プリウスPHV」。トヨタの期待とは裏腹に、売れ行きは決して順調といえなかった。すでに次期モデルの企画はスタートしている。販売目標に到達しない要因をつかみ、一刻も早くフィードバックしなければ。現行モデルをお客様がどう捉えているのか。直接、その生の声を聞くために、最も環境規制が厳しく、環境車の主戦場であるアメリカへと旅立った。
赴任/出張先:ニューヨーク近郊、カリフォルニア
現在の所属部署
商品・事業企画部 基本企画室
グローバルに将来の自動車市場を見据え、全体最適を考えた上で、どのようなラインナップを構えれば、全世界のお客様ニーズにタイムリーにお応えできるのかといった戦略を練る部署。中でも私は、PHV(プラグイン・ハイブリッド)やEV(電気自動車)といった次世代環境車の将来戦略を担当しています。
学生時代
大学時代は4年間、寮住まい。4名での集団生活で、毎日が修学旅行状態でした。環境問題に興味を持ち、その縁から環境専門誌の編集部で3年間アルバイト。学校に行くよりも、編集部に入り浸っている時間が長かったかもしれません。
志望動機
高校時代から自身の関心領域であった「環境問題」の解決に貢献できる企業を探しました。中でも自動車業界は、将来的に環境技術が競争力の一角を担い、社会変革の中核的存在になるはずだと思っていました。トヨタに決めたのは、初代「プリウス」の存在。ハイブリッド車の黎明期に、普及を強く意識したクルマの企画に、トヨタの環境への取り組みに対する本気度を感じました。
カリフォルニア州でプリウス PHVユーザーへのインタビューを行った時の写真。お客様のライフスタイル、使用実態や満足点、不満点を細かくお聞きする。
最終戦争によって人類社会が滅びてから、1000年の時を経た未来の話。全7巻からなる、あるアニメーションの原作を読み終えたとき、私の心の中に大きな衝撃が起こりました。自然とは?環境とは?人間とは?当時、高校3年生。世の中では“エコ”という言葉が声高に叫ばれるようになってきた最中で、「環境問題」は私の進む道を決める不動のテーマになりました。大学は、環境経済学を専攻。アルバイトは環境専門誌の編集部員。そして就職。地球環境を少しでも良くしていくためには、やはり実業で世界的に影響力のある企業がいい。エネルギー、自動車、鉄鋼… 迷う中で決め手になったのは、“21世紀に間に合いました”という鮮烈なキャッチコピーとともにデビューした「プリウス」の存在でした。ガソリンエンジンと電気モーターを備えたHV(ハイブリッド車)というこれまでにないアプローチ。エコカーを世の中全体へ普及させていこうという強い想いがひしひしと伝わってきた。ここならば、地球環境に役立つ仕事ができる。地球規模でチャレンジできるはずだ。私はトヨタへの入社を決めました。
入社後は、調査部へ配属。「うーん、環境とは関係なさそうだなあ」と内心はちょっとがっかり。しかし、想い続けなければ夢は実現しない。最初の2年ほどは、世界の需要予測などマーケットリサーチをしていましたが、積極的に手を挙げているうちに、競合他社の環境技術戦略のベンチマーキングを任せてもらえるようになりました。その後も「10年後のインド・中国のライフスタイルはどうなるのか」「2020年代の世界を予測して、自動車業界にどんなリスクがあるのか」など、環境や経済からのアプローチをからめた未来予測を担当。だんだん、環境とのかかわりが濃くなってきました。そして2012年、ついに次世代環境車の商品企画の担当へ。初代プリウスによってトヨタに引き寄せられた私は、その孫ともいえる「次期プリウスPHV(plug-in hybridプラグイン・ハイブリッド車)」の企画を担当することになったのです。
こちらはニュージャージー州でユーザーインタビューを行った時の写真。充電ケーブル収納フックを自作するなど、DIY文化の浸透が伺えた。
こちらもニュージャージー州のお客様。充電ケーブル盗難防止のため、南京錠を設置。大事に扱っていただいていることにうれしく思う。
「プリウス」と「プリウスPHV」の違いはなにか。簡単にいえば、PHVは電化製品のようにコンセントから充電できる機能を搭載したクルマ。当然、プリウスよりも電気で走行する時間が長くなるため、燃費も大幅に向上、CO2の排出も軽減されるわけです。プリウスは世界でもベストセラーとなり、HV車(ハイブリッド車)の普及に大きく貢献してきました。さらに、その先へ。ポストHVの担い手は、PHVをおいて他にない。私たちが強い決意を持って、2012年に世に送り出したのが「プリウスPHV」でした。しかし、その売れ行きは決して好調とは言えませんでした。想定していた販売目標に、届いていない。
なぜだろう、何がいけないのか。どうすればお客様の期待に応えられるのか。数年後を見据えて、すでに次期「プリウスPHV」の企画は進んでいます。このままでは、まずい。早く現行「プリウスPHV」に対する市場ニーズをさぐり、次期モデル企画にフィードバックしなければ。とにかく市場を、お客様を見に行こう。発売から約1年。危機感を募らせる中、開発を担当するエンジニアと私はアメリカへ向かいました。
なぜアメリカか。それはトヨタの収益を考える上で最重要市場の一角であることはもちろん、世界で最も厳しい環境規制がある国だから。燃費やCO2排出に関する規制だけでなく、高速道路に環境車の優先レーンが設置されていたり、州によっては自動車メーカーが販売するクルマのうちの一定比率をEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)などZero Emission Vehicle(無公害車)にしなければならない。だからこそ、環境車に対するアメリカ市場の期待は大きいわけです。当然、競合も多く、手ごわい。環境車の激戦区で、期待に応えられるかどうかが「プリウスPHV」をポストHVに成長させるための試金石になる。とにかく、お客様の生の声を聞こう。私たちは、東海岸(ニューヨーク周辺)と西海外(カリフォルニア周辺)を中心に、徹底的に販売店を回り、お客様のご自宅まで伺ってインタビューを重ねました。
ロンドンに出張したことも。販売店にてBMW i8のボデーフレーム展示を視察。電池搭載で重くなりがちな車体を、大幅に軽量化していることに驚かされた。
NYマンハッタンのレストランにて FGI(フォーカス・グループ・インタビュー)を実施。プリウス PHVオーナーを集め、地下の個室を貸切りにして行った。
「ソーラーカーみたいなカタチでさ、太陽光でつくった電気で走るとかね」「コンシェルジュが画面に現れて、教えてくれるような情報端末をつけてよ」「トヨタならできるでしょ!」・・・
「プリウスPHV」を買ってくれたお客様や、検討いただいたが買っていただけなかったお客様など約30名にグループインタビュー。いやいや、こんなに熱い意見が飛び出すとは。もっと辛辣な批判を浴びる覚悟をしていた私は、想像を超えた展開にびっくり。みんなが自分のことのようにプリウスを語っている。まさに圧巻。インタビューしながらも、ああ、アメリカのお客様はプリウスを愛してくれているんだ、心からトヨタに信頼を寄せてくれているんだ、と胸を打たれました。一方で、現行モデルがお客様の期待に応えきれていない。企画に携わる者として悔しさと責任を痛感しました。
アメリカで「プリウスPHV」が思ったように伸びない原因。それは一言でいえば、「Wow!(驚き)」が足りないこと。「プリウス」から「プリウスPHV」になり価格は8000ドル近く高くなりました。しかも毎日充電する必要がある。その価格や手間を超えるだけの、先進性や装備、そしてEV航続距離などに驚きがない、というのがアメリカの声でした。私たちは劇的に燃費が良くなればお客様に確実に喜んでいただけると思っていた。間違いではないけれど、それだけじゃダメなんだ。もっと「Wow!」を創らなければ・・・
とくに、EV走行距離は大きな課題。アメリカは通勤で片道30kmは走る。しかし現行モデルは一晩充電してもEV走行できるのは約20km。お客様のおっしゃることはごもっともだ。航続距離を伸ばすには電池を大きくしなければならない。その分、価格も重量も増えてしまう。それでも、次期PHVでは絶対になんとかしなければならない。
インタビューも終わって街行くクルマの流れを観察する中、西海岸ではぽつぽつ見かけることができた「プリウスPHV」も、東海岸ではあまり見かけることがありませんでした。なんと寂しい光景だろう。次にここに来るときは、あふれるほどの「プリウスPHV」が走っている光景を目にしたい。そんな決意を胸に、私たちは帰国しました。
カリフォルニア州のフリーウェイ(高速道)を疾走するプリウス PHV。もっとたくさんのPHVが走る姿を実現するため、我々の挑戦は終わらない。
 
帰国してすぐに、私はお客様の声や分析データをもとに、「次期PHV企画の商品性課題」についてまとめました。特にEV走行距離を伸ばすことは大命題。すでに次期PHVはコンセプトも決まっている中で、変更は難しいかもしれない。しかし、なんとしても実現する。アメリカで熱く語ってくれたお客様のためにも。私はPHVの開発責任者と対話し、次世代環境車の方向を決めていく社内会議でも議論を重ねながら、「EV航続距離」に関する企画変更を提案。最終的には経営トップのジャッジを経て、ついに企画変更が承認されました。この変更がアメリカの、そして世界のお客様を笑顔にする一歩になればうれしい。これからも「Wow!」を創りだしていかなければ期待は超えられませんが、そのミッションは後任に譲り、私は「プリウスPHV」の企画担当を離れることに。現在は、個別車種の企画にとどまらず、次世代環境車の全体ラインナップ戦略を提案する仕事を担当しています。
10年後も、50年後も、クルマがお客様の移動手段であり続けるためには、地球環境に負担をかけないことが不可欠です。ご存じの通り、現在はHVやPHV、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)など、動力に電気を利用する「電動動化」というエネルギー革命の波が自動車業界に大きなインパクトを与えています。また同時並行で、「クルマとクルマ」や「クルマと道路」を通信でつなぐなど、より安全で快適な運転を可能にする世界を目指して、情報通信領域とクルマの関わりも大きく進化しつつあります。エネルギーの系と情報通信の系が進化と融合を遂げる今、自動車産業は100年に1度の大きな革命前夜のような状態。トヨタも純粋な自動車メーカーという枠を超えて、さまざまなビジネスチャンスやチャレンジが増えてくることは間違いありません。「未来にわくわくしながら、革命前夜を楽しんでやろう!」「そんな想いを共有できる人と一緒に、まだ見ぬ世界をつくっていきたい!」。日々、そう思って仕事をしてます。

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