INTERVIEW

港がストなら、ジェット機を借りろ。地域のために、工場は止めない。

生産K.S

PROFILE

生産管理部 商学部卒 1996年入社

移動手段だけでなく、自己表現や団らんスペースにもなるクルマという商材の幅広さに魅力を感じて、トヨタ自動車へ入社。高岡工場を皮切りに、米国NUMMI(米国ゼネラル・モーター社とトヨタが合弁で設立した工場)、TEMA(北米生産統括会社 現TMNA)へ。生産管理分野で19年のキャリアを積む。

入社数年の若手が、4年で1. 5兆円分もの部品を動かす

私はこれまでほとんどの時間を、生産管理の分野で過ごしてきました。生産管理といっても馴染みがないかも知れませんが、簡単にいえば「いつ、どれだけのクルマを、どうつくるか」を決めていく仕事です。最初の6年間は国内で、工場の稼働管理や部品発注業務を担当していました。

7年目に、当時カリフォルニアにあった “NUMMI”という工場に、生産管理のコーディネーターとして赴任。クルマはおよそ3万点の部品から出来ており、その半分以上は現地のサプライヤーから調達します。発注する量は膨大であり、私がNUMMIにいた4年間で動かした部品の金額は、なんと1.5兆円にも上りました。30代そこそこの若手一人の指示で動かすには凄まじい金額ですが、それ以上に、トヨタは地域経済や雇用を支え、また同時にそれらに支えられていることを実感。工場をつくるということは、クルマだけでなく、まさに町をつくることなのだ、と。

わずか10台のために、日本から飛行機を飛ばして

わずか10台のために、
日本から飛行機を飛ばして

生産管理コーディネーターとして、いかに需要に応じて過不足なく部品を手配するか、市場の売れ行きに合わせて、綿密に部品発注計画を立てていきます。それでも難しいのが、モデルチェンジの時です。新しいモデルに切り替える際に、現行モデルをどのくらいつくるのか。カウントダウンしながら細かく発注コントロールをするのですが、ある時、残り10台というところでボディー関連の部品が足りなくなることが発覚。その部品は日本でつくっていましたが、供給元に電話したところ「素材はあるが、完成したものはない」と。まずい、残り24時間以内に手に入れなければ、万事休す! 普段は陽気な私も、さすがに真っ青です。

やれるところまでやるしかない、と気を取り直して日本側と話をしていたところ、供給元から「事情はわかりました、今から緊急生産しますよ」との電話が。その心意気に感謝するしかありませんでした。しかし、通常の船で運ぶルートだと24時間以内には絶対に間に合わない。飛行機で運ぶしかない。日本のメンバーが生産場所に待機して完成した部品をその場で梱包、空港まで運ぶ間に、別のチームが最短ルートを調べ、部品は名古屋からハワイを経由してサンフランシスコへ。23時間後にNUMMIへ到着。無事、生産に間に合いました。わずか10台でも新しいクルマを心待ちにするお客様をお待たせさせることはできませんし、その部品が無ければNUMMIで関係する作業員すべての仕事を止めてしまうところでした。間に合った安堵感とともに、いざというときのオールトヨタの底力を感じた出来事でした。

工場が止まれば、
想像できない数の人たちが途方に暮れる

飛行機といえば、もうひとつ。私がNUMMIにいるときに、西海岸で大規模な港湾労働者のストライキが起こりました。通常、部品は船で運ぶために、港が閉鎖されれば部品が入ってこない。じゃあ、どうするか。私たちが決断したのは、ジャンボジェット機をチャーターして、部品を空輸する方法でした。工場が1日稼働するのに必要な部品は、2機分。結局、ストが終わるまでに、NUMMIだけで十数機(北米全工場で数十機)はチャーターしたと思います。

しかし、たとえ億単位のコストがかかっても、工場を止めるよりは断然いい。私たちの想いに、米国の現地スタッフも必死で応えてくれました。私も日夜対応に追われていたのですが、「今日は帰りなよ。あとはオレたちがやっておくから」と声をかけてくれたりしました。嬉しかったですね。米国といえば自分の役割以外は関わらないドライな感じがしますが、トヨタでは決してそんなことはない。やはりチームワークやリスペクトを重んじる“トヨタウェイ”が浸透しているんでしょうね。

同時に、工場を止めたくないという強い想いは現地スタッフも一緒です。工場を止めてしまうと、お客様にもご迷惑がかかる。そして、工場で働く数千人のスタッフはもちろん、何万人というサプライヤーで働く人たち、あるいは工場近郊のサービス業に従事する人たちなど、すべての生活が止まってしまう。工場を止めないこと。それは雇用を守り、地域に根ざすトヨタの社会的責任なのです。

いいクルマづくりへ投資するために、利益を出し続ける

いいクルマづくりへ投資するために、利益を出し続ける

どんな景気の波がきても、利益を出せるようにする。それは、何のためか。一つは、納税を通じて、地域社会に恩返ししていくこと。そして、もう一つは、いいクルマをつくり続けるために再投資が必要だからです。「利益が出ないから、もっといいクルマがつくれない」。それは、お客様への裏切り行為だと思う。絶えず、いいクルマをつくり、利益を社会へと還元していく。それもまた、トヨタの大きな責任のひとつなのです。

所属は取材当時のものです。

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