INTERVIEW

走りつづけた学生時代の夢を、今。少年の憧れとなる、スポーツカーを。

生産T.T

PROFILE

GAZOO Racing Company

機械科学専攻修了 2002年入社

大学・大学院時代はクルマいじりに明け暮れ、仲間とサーキット走行会を開催してしまうほど筋金入りのクルマ好き。入社後は、エンジン冷却・吸気部品の設計を経て、ボデー設計へ。現行プリウスやRAV4、ハリアー、レクサスNXのアンダーボデーの設計を担当。現在は、スポーツ車両開発を目的としたGAZOO Racing Company のGR開発統括部のグループ長としてボデー全般の開発を担当している。

クルマをいじり、サーキットで走る。
クルマまみれの大学生

高校時代、隣の家のお兄さんに乗せてもらったスポーツカー。それがクルマに恋い焦がれた原点でした。「将来は、自動車メーカーに就職してスポーツカーをつくる」。その夢のために、大学は機械科へ進学。大学院もエンジン関係の研究室でした。機械専攻ということもあり、周囲にはクルマ好きがたくさんいました。類は友を呼ぶというか、話をしているうちにクルマ好きがどんどん集まってきました。すると、「じゃあ、みんなで走ろうか」ということになり、地元北海道のサーキットを貸し切って走行会を企画。タイムアタックをワイワイやって、すごく楽しかった。それで定例にしようということで、結局大学院を卒業するまで、毎年3回ほど走行会を開催しました。多い時だと50人ほど集まりましたね。
いいタイムを出すためには、クルマもいじります。学生なのでお金がかけられないこともありますが、自分でいじるのが好きだったんです。アルバイトしてパーツを買ってきては、組み上げて。手を真っ黒にして没頭していました。乗っていたクルマは、当時トヨタが発売していた“スターレット・ターボ”。都合で3台乗り継ぎました。そうそう、そのサーキット場で、スターレットの最速記録を持っていたんですよ。

よりたくましいボデーをつくる“大家”さんへ

よりたくましいボデーをつくる
“大家”さんへ

学生時代の夢を叶えるべく、トヨタへ入社。トヨタを選んだのは「チームワーク」を大切にする価値観が、自分の考え方と一致したから。入社後、エンジン冷却・吸気部品の設計を6年ほどやった後に、ボデー設計へ異動。
ボデーには、エンジンやトランスミッションなど様々な部品が搭載されてきます。時には場所の取り合いになる中で、部品という“住人”たちが、いかに仲良く一つ屋根の下に暮らせるか。それを考えながら、クルマの強さである剛性や衝突安全性、あるいは軽さを実現していきます。だから私はボデー設計のことを「クルマの大家さん」だと思っています。
大家の腕の見せ所としては、いかに素性のよい強いボデーをつくるか。骨格は、まっすぐが一番強い。しかし、さまざまな“住人”が気持ちよく住めるように、骨格を削らなければならないわけです。そこを、いかにまっすぐに近づけるか。それが、大変さであり、楽しさですね。ボデー設計は、クルマに関わるあらゆる設計担当と話をしながら進めていきますから、クルマ全体を見渡すことができる。だから知見は広がります。
これまでプリウスやハリアー、レクサスNXなどのボデーを手がけてきたのですが、私はどうしても学生時代から憧れてきたスポーツカーをやってみたかった。そんな夢が叶ったのが、2015年、先行開発としてスポーツカーのアンダーボデーの開発を担当することになりました。

反対した上司が、試作車から降りた瞬間、
笑顔になった

クルマは重心の高さやロール軸の状態によって、ハンドル操作したときの動きは変わってきます。操縦安定性や乗り味に関わるこれらを、私たちは“慣性諸元”と呼んでいます。操縦安定性や乗心地は、サスペンションを担当するシャシー設計でチューニングするのがこれまでのトヨタでは常識で、慣性諸元を考えた部品配置はあまりできていませんでした。しかし私は、「スポーツカーたるもの、ボデー設計も慣性諸元を考えてつくるべきだ」という想いがありました。そこで考えたのが、「ボデーに錘を付け替えることによって、重心やロール軸の角度を変化させ、乗り味を比較体感できる試験車両」でした。これがあれば、慣性諸元の重要性が明らかになると思ったわけです。さっそく予算を握る上司に提案したところ、答えはNO。そこに、そんな予算は割けないと。
仕方がない、といって諦めるわけにはいきません。スポーツカーは乗って楽しくないとダメですから。私は秘密裏にチームメンバーや関連部署の人たちに声をかけて話を進めていきました。夢を語ると、賛同してくれる人がいるものです。上司も見て見ぬふりをしてくれたのか、とうとう試験車両が出来上がりました。みんなに乗ってもらい、ボデーの錘を変えることで、乗り味が変わることを体感してもらうと、全員「おおっ!全然ちがうね」と笑顔でクルマから降りてくるんですね。NOを出した上司も、クルマから笑顔で降りてきました(笑)。慣性諸元を考えたボデーづくり。現行のプリウスでも採用されたこの考え方は、新しいトヨタの常識になるかもしれません。

「クルマを鍛え、人を鍛える」

「クルマを鍛え、人を鍛える」

2016年からは、GR開発統括部に異動。本格的に次期スポーツ車のボデー開発全般を担当しています。“GAZOO Racing”といえばレースなどで聞いたことがあるかもしれませんが、GRはトヨタのスポーツカーブランドとして位置付けられる組織です。現在は、レースに関わることだけでなく、「86」のようなベース車両をカスタマイズするパーツの販売から、サーキット走行可能なチューンナップが施された車両の販売などを行っています。
トヨタが様々なレースに参戦するのは、勝ちたいという理由はもちろんありますが、それ以上に、お客様のために品質を上げていくという目的が大きい。過酷なレースの中で、壊れないクルマをつくることは、最終的にいいクルマづくりへと繋がっていきます。同時に、私たち設計者やメカニックを始め、関わる人も成長する。章男社長がよく言う「クルマを鍛え、人も鍛える」です。
GRはトヨタの中では一番小さなカンパニーです。正直、GRが失敗したぐらいではトヨタは揺らがない。だからこそ、思い切ったチャレンジをしていきたい。目指すは、見てかっこいい、乗ってワクワクするスポーツカーをつくること。子どもたちや若い人たちに、「いつかは乗ってみたいな」と憧れられるようなスポーツカーを世の中に送り出す。そして、クルマ好きを増やしていきたい。かつて、スポーツカーに憧れた私のような人を。

所属は取材当時のものです。

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